Panasonic RX-DT901を改造2 外部音声入力対応化改造を行います。 |
Panasonicのバブルラジカセといったら、外部音声入力端子(AUX端子)の装備は基本中の基本ですが、おかしなことにこのRX-DT901には付いていません。前モデルのDT909と後モデルのDT95には装備しているのに、なんででしょ?
AUX端子が装備されていれば、PCの音源に繋いで良い音質を味わえますし、ちょっとした外部機器の接続に役立ったりして便利なんですよね。
そこで、「無いものは付ければ良い」ということでDT901に外部音声入力機能を追加させようと考えました。
TARGET
CD・ラジオ・カセットからの音声信号は、ゲイン調整されたあとにこの「IC602」にあるモトローラ製MC4052B(以下4052)に入ります。 これはデュアル4chアナログマルチプレクサで、実際にはソースが3つなので3ch分使っています。 このことは、前回の改造記事で取り上げました。つまり外部音声入力(以下AUX)に対応させるには、使っていない1chを利用すれば良いんです。 他の方法もいくつか考えられますが、これが一番合理的で、且つ音質が良いと思います |
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・・・と、簡単に書きましたが実際には越えるべき山がいくつかあります。 それらをまとめると @:どのように4052を制御するのか。 A:その制御回路はどうするか。 B:AUX切り替えはどのように行うか。 C:AUXの方式はどうするか、ゲインはどのくらいか。 |
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@について(その1) まず、ある選択状態(CD or TUN or TAPE)のとき、4052の出力ZA,ZBを制御する右図の10番ピン・9番ピンのA0,A1を考えます。 ここで、4052の各ピンを解析したところ、右の表になりました。この表より、使用されていないY3がAUXとして選択されるようにA0,A1を制御すれば良いことになります。つまりそれはTAPE選択時(A1がHのとき)、A0をHにしてやれば良いわけです。 ※ここでお気づきかと思いますが、表よりY0出力時(TUNER選択時)にA0がHである場合、Y1つまり音声のみCDに選択されます。ですが、このときCDは停止しているためCDの音声は出ません。 これを解決するにはNORを組み合わせてA1がHのときのみ有効にするか、A1がLのときは以下に出てくるT-FFの動作を止めればよいのですが、若干回路が複雑になりますし、操作に致命的な事ではなので目をつぶることにします。 |
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@について(その2) このことを踏まえた上で、具体的な構成を右図のように考えてみました。 まず、タクトスイッチなどのプッシュ型スイッチにより正パルスがT-FFに与えられます。T-FFではこの立ち上がりエッジにより出力QをHとしてラッチ(保持)をかけ、これをDT901本来の4052のA0制御信号との和(OR)としてA0=Hの信号を4052のA0に送る。するとAUXが選択されます。 もし、もう一度タクトスイッチを押したとすれば、T-FFのQはLにラッチされA0=LつまりTAPE音声に切り替わります。 つまり、タクトスイッチを押すごとにAUX/TAPEと入力音声の切替えが繰り返されます。 さて、AUX選択時にはそれが分かるような印を付けなければなりませんが、流石にLCDに「AUX」とは出せないので、電源LEDをAUX時には緑色にすることで区別するように考えました。 |
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Aについて 具体的に回路化したものが下図になります。ここでT-FFはTC4027のJK-FFを使い、ORはダイオードを用います。 Q1とQ2は定番の2SC1815で十分使えますが、後に改造で余る2SC3311を再利用すれば部品代が浮きます。 ちなみに、当初はLED信号をICから直接取り出してみたのですが、これだと電圧降下が激しくて4052の閾値以下になってしまいました。 従来の電源LEDを取り外し、新たに2色入ったものを使い、通常は赤、AUX時には緑を点灯させます。 |
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Bについて AUXを切替えるためのスイッチをどうするかなんですが、できればスタイリッシュなDT901の外観を損なうことなく実現したいものです。 そこで、本体のタクトスイッチのどれかを乗っ取ることにしました。一番使わなそうな機能を受け持つボタンとして、この「ATLS」があります。 ATLSとは、確かCDをテープに録音する際、CDを高速サーチしての最大レベルを検知し、最適なレベルで録音する機能だったと思います。今となっては全く使わない機能です。 |
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Cについて AUX入力端子は、本体背面の「CD OUT」端子を使います。今時CDオンリーの音声出力ったって、デジタルならともかく、必要ないでしょう。RCAなので普通のピンジャックが接続できます。 ゲインに関しては4052に入る段階で、それぞれのソースが抵抗により調整されています。 AUXはおおよそCDと同じレベルでしょうから、定数はCDと同じくしました。 |
改造開始
スイッチ付近 | |
こちらがT-FFとOR回路。非常にコンパクトにできます。 基板を再利用しているので関係ない文字が書いてあります。 |
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ATLSボタンを改造するときに、その基板にあるコネクタに目が止まりました。 驚いたことに、この基板上にある操作ボタン14個は、このたった3つ(というか2つ)の制御信号として扱われます。 |
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基板裏側。 制御ICが付いているわけでもなく、単にスイッチと異なる抵抗が直列に繋がっているだけです。 ってことは、マイコン側で電圧を感知して機能を振り分けているってこと?? こんなの初めて見たので、鳥肌が立ちました(w |
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鳥肌を感じつつも、基板一番右端のパターンを切って、こんな感じで配線します。 |
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RCAジャック付近 | |
ミュート用のQ402とQ502の2SC3311を取り外し、すぐ脇にある2つの抵抗も外します。また、CDからの音声が来ないように、写真上のようにパターンを切断します。 | |
そして、このようにゲイン調整&バイアス抵抗を取り付けます。 カップリングコンデンサもかならず付けてください。4.7uF程度で十分です。 |
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4052付近 | |
4052のY3、つまり4番と11番ピンがGNDに落とされているので、AUX入力を可能にするためには解除しなければいけません。 11番ピンのパターンがICの下に隠れているため、取り外してみました。するとIC右のGNDから伸びてるパターンに繋がっているだけでした。どうやらパターンを切るためにICを剥がす必要はなさそうです。 |
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ということで、矢印3カ所のパターンを切断します。 橙色の線がA0。白線が音声信号です。 |
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DT901内部から出ているCONT A0の信号はここからとります。 | |
液晶表示付近 | |
T-FF回路は、LCDが載っている基板裏の、この場所にテープで接着しました。5Vもこの付近から取れます。 (写真はLEDドライブトランジスタを入れる前のものです) |
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従来の電源LEDを取り外し、そのパターンも切断して取り付けます。 | |
動作確認
AUX入力は、こんな感じでRCAをそのまま突っ込みます。 | |
通常は電源LEDは赤です。 | |
ここでファンクションをTAPEにして、ATLSボタンをポチッとな・・・ | |
緑に変色すると同時に、AUXからの音声が出力されます。 先ほども書きましたが、T-FFはCD/TAPE/TUNのどれのモードでも動作していますので、 TUNER選択時にLEDが緑だと音声がCDに選択されてしまいます。そのためミュートが掛かっているような状態になります。つまり実際にAUXからの音声が出力されるのはTAPE選択時のみです。 もう一度ATLSを押すと赤LEDになってTAPE音声に切り替わります。 |
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音質処理・スペアナ表示は全て4052を通った後で行われています。そのためAUX音声は以下のことも従来の機能通り可能です。 ・サラウンド調整やEQ・S-XBSも機能します。 ・スペアナ表示も従来通りに可能です。 これらのことができるのも、バブル機ならではのことでしょう。 ただし、AUXからテープへの録音はできません。これは考えてみれば当たり前のことですが、今までTAPE音声の選択状態だったところを乗っ取っているからです。 テープ録音用音声信号は4052を通った後にデッキ制御基板に送られていますが、これはCD/TUN選択時にのみ有効になります。 もし録音を可能にするのであれば、MIX-MIC端子から追っていけば何とかなるでしょう。 |
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適正レベル以上の音声が入力されると、スペアナのレベルが常にFULLに振れます。と同時に歪みを感じますので、スペアナ表示を目安としてソース機器側でAUX音声レベルを調整してください。 しかし普通のCDプレーヤやPC音源からの入力ならば問題ありません。 ちなみに電源を切ると、赤LEDつまり初期状態に戻ります。 |
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改造成功
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