山水 AU-D607X DECADE修理
その1
ジャンク入手した山水製プリメインアンプの修理。



H/Oで「音出ず」のこれが\2000であったので捕獲してみました。実は以前、別の店でAU-α607EXTRAのジャンクが同じ値段で売っていたのですが、当時はあまり興味なかったので買いませんでした。ところがそれ以降、山水サウンドがどのようなものか気になりはじめ、このメーカは下位機でも手抜きのない設計だとかで、一度は弄ってみたいと思っていました。

買うときに店員に「ほんとに音出ませんよ?いいんですか??」としつこく言われました。きっとジャンク品でクレーム付ける客が多いのでしょうね。



調査開始

症状ですが、異常を感知してプロテクターが動作しています。

とりあえず開けてみました。なるほどしっかりとした作りです。でもさすがに下位機だけあって、内部にはゆとりがあります。
トランスも今まで見てきたアンプの中では一番大きいです(って、ロクなもん弄ってきてない証拠ですが^^;)。コイルには銅板でシールドがされており、最低限の磁束漏れ対策はされているようです。
パワーアンプ用の平滑コンデンサはnichikonのNEGATIVE BLACKで63WV10000uFが2本です。整流ダイオードにも放熱器が付いています。

それぞれ、鉄板でガッチリと固定されていていい感じです。
これは↑の平滑コンデンサの裏側。 アレ?どちらも共通になってますね?
私が今まで考えてきたDC結合アンプは、センタータップ付きのトランスでGNDをはさんでプラスとマイナスの2電源を用意するのですが、これはセンタータップ付トランスで別々に整流されたのちに平滑段階で一緒になって1電源になっています。
ここで平滑された電源はパワーアンプ基板にいきます。

ところで、水谷さんのサイトにもAU-D607X DECADEの記事があるのですが、それを見るとこの写真の真ん中に写っている赤と青の線(ねじっているやつじゃないやつ)が付いていません。ロットによって若干の変更があるようですね。
ちなみに、これは2つの平滑コンデンサの電位を揃え、20000uFの1発としてるのですが、これだとほぼ同じ電圧がそれぞれのパワーアンプ基板に供給されることになります。が、これを無くすと電位が完全にそろっていない状態でパワーアンプ基板に供給されるわけですが、「整流段階から左右対称回路」と考えた場合には後者の方がいいんですよね。どうなんでしょ?

あと、ちょっとこのケーブルが細いような気がするので後でパワーアップしようと思います。
これは背面パネルに付いたアース端子の裏側。後に分かることですが、このアンプはDC結合型ではなくバランス型で、そのためにスピーカのコールドもアースから絶縁されています。


病巣探り

こちらがパワーアンプ基板。それぞれのchのホット/コールド用に2つずつ使うので計8個の石が載ってます。ちなみに、さすがに下位機だけあって音響用コンデンサは無いです。ほとんどが日ケミのSLという85度標準品(推定)を使っています。

で、プロテクターが動作する原因ですが、DCオフセットが13V近い値になっています。
試しにコントロール基板からの音声出力を切ってみたところ、プロテクトがはずれました。しかし、DCオフセットを測ると40mVあたりから次第に増加していき、急激に上昇して1.6Vを超えます。となるとどっちも逝かれてるの??

しかも困ったことにバランス調整用の半固定抵抗を回すと、DCオフセットがいきなり30V近くに跳ね上がります!コワー
そこでとりあえず、テスタで石をチェックしたところ、ドライブ段・終段のトランジスタ(C3284/A1303.C3298/1306)は全て問題ありませんでした。一安心?

初段基板の対策
JA1MDN修理工房さんでは数多くの山水アンプを修理されていますが、ここを読んでると、”初段FET”と”半固定抵抗”は必ずといっていいほど取り替えるべき物みたいです。そこで、私もやってみることにします(爆)
若松で2SK389を初段用に2個、半固定抵抗は千石で、ついでだからとコンデンサもMUSEを使っちゃいました。ちなみに、音響用コンデンサを買ったのはこれが初めてだったりします(爆)やっぱ高い!
コンデンサの足に負担が掛からないよう、このように曲げて取り付けます。
取り付け後。
この最中に、この基板上に見たことのない部品を発見しました。ごま粒の大きくしたような部品なのですが、シルク印刷にはD1(D2)とあったので恐らくはダイオードの仲間なんでしょうが、テスタのダイオードチェック機能でも反応がありません。
そこで同じ機種をお持ちのICEさんにも協力していただき、確認してもらいましたが、「たぶんこれはこれでOKでしょう」ってことになりました(汗

シルク印刷の記号には三角が3つ付いてるのでダイオード3つ分と同じ機能なのかな?
裏側です。ハンダクラックを多数発見しました。もしかすると、これが原因でDCオフセット30Vなんていう恐ろしい数値が出たのかも知れません。
こんな感じで、ハンダを山盛りにしてやりました。

これで片ch分なのでもう1chも同じようにします。

プロテクト基板の対策
載ってる石は2SC603と2SA115なんですが、幸いなことに日米商事に2SC603が10個\100で売っていたので取り替えてみることにしました。2SA115は2SC1015で代用。電解コンデンサは日ケミのKMGにしました。

パワーアンプ基板の対策
ハンダクラックが起きそうな場所が多数確認できたので、いっそのこと全部盛り直しました。
写真だと分かりにくいですが、中央下のコンデンサも日ケミのKMEと松下のFCに取り替えました。日ケミで統一したかったのですが、なかなか安いのが見つからなくて・・・


しかし...

バランス調整したらプロテクトはずれるようになりました。DCオフセットも20mV程度まで追い込めます。が、これはコントロール基板からの音声信号を切った状態のことで、音出すためにはこれをアンプ基板に接続しないといけないんですが、接続したとたんにプロテクト再来・・・
コントロール基板からの出力&アンプ入力は0mV近くで正常なのですが、接続したとたんに110mV近くになります。

ということで、コントロール基板を疑うことにします。
この基板にも2SK389が2つ付いているのですが、これは若松で買うと\200と高めなので、ケチって2SK30ATM-Yを2つ熱結合させて代用することにします。
MUSEを2個、真ん中に写っている4個のコンデンサは松下のMシリーズです。ここは100uF →330uFに容量アップしました。

が...

相変わらずプロテクターが動作しています。
そこでコントロール基板に供給される電圧を測ってみると、+33V/-15Vになってました!ここは通常±33V出ていなければならないんです。
写真が定電圧電源回路にある33Vツェナーです。ここは2電源であるために2本付いています。
それの片方が逝かれていました。
手元に33Vツェナーが無かったので、転がっていたSW電源からとった36Vツェナーで代用しました。
2003/3/20追記

千石で33.6V 0.5Wツェナーを買ってきました。



音出ました!!

今まではコントロール基板からの出力をパワーアンプ基板に接続するとDCオフセットが非常に高い値になってましたが、今度は落ち着いています。この状態でバランス調整を行ってもプロテクトが外れ、DCオフセットも一桁mVまで追い込めます。

しかし、電源投入から数分経過すると片側のスピーカから「ボソボソ」と、石の逝かれたような音が聞こえてきます。しかも音量を上げると酷く歪んでしまいます・・・・・






そしてその2へ続く...



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