IWATSU SS-7602の修理

岩通製20MHz帯域オシロスコープの修理。

※ブラウン管製品は、万単位の電圧を発生する非常に危険な装置です。
内部には高電圧が掛かる場所が数多くあり、万が一触れてしまうと生命に関わる場合もあります。
よって、知識のない方は絶対に分解・修理作業は行わないで下さい。
ここで紹介する記事は、あくまで筆者の自己責任において行ったことを結果として報告しているものであり、
閲覧する方々にブラウン管系の分解・修理を勧めるものでは一切ありません。
仮に、ここに書いてある記事が原因で、重大な事故があったとしても、
当方は一切その責任を負いませんので、よろしくお願いします。


※また、本来ならオシロスコープなどの測定器は、個人で修理するべきものではありません。
測定器は、修理後はもちろん数年ごとに校正しなければならず、これらの作業は個人レベルではまずできません。

実家用に手軽なオシロが欲しかったので、某オクでジャンク品を落札してみました。症状は「ポイントが右端に寄っていて正常に機能しない」というもので、\1k(送料別)。掃引時間可変ツマミも破損しており、周辺のパネルも凹んでいるようです(廃棄の際に壊されたのかも?)
しかし出品写真を良く見るとPOSITIONが右一杯に捻ってあることから、ひょっとするとこれな?とも思ったのですが・・・




症状

これが届いた物です。なんかスゲー汚いです。ハンダのヤニやカスがこびり付いています。しかも本体のねじが1本欠損しており、他のねじも緩んでいるところがありました。間違いなく空けられたようです。
症状を確認してみましたが、確かにこんな感じになりました。残念ながらPOSITIONボリュームを左に回しても正常に機能することはなく、ポイントも消えてしまいます。
掃引時間切り替えスイッチもなんだか変に固いです。
金槌で叩いたのだろうか・・・


開腹・修復

中を開けてみると、幸いにも部品取りされた形跡はないのですが、ご覧のように掃引スイッチが完全に逝っちゃってます。
基板を取り外すには前面パネルを外さないといけないのですが、このパネルが糊で接着されており、剥がすのに苦労しました。やはり廉価機なこうなんでしょうか。
前面パネルを外すと、そのスイッチがコロリと落ちてきました。

岩通は個人向けに部品供給を行っているのだろうか・・・
しかし問い合わせだの、発注だの面倒なので自力でこのスイッチを修理することに決定。
全バラします。幸いにも致命的ではないようで、単に割れた基板を接合すればなんとか成りそうです。ただし強度は不明ですが。
アロンαで1つずつ接着していきます。ついでに接点もヤスリで磨いておきます。
割れたパターンもハンダで接合します。
ということで一応できました。
可変VOL(左端のやつ)だけは修理不能です。10kΩBですが、形状が特殊で入手できるかどうかも不明ですし、この機能は無くても困らないので使わないことにします。
しかしこのまま何も対処しないと正常に掃引されませんから、このように10kΩで常にCAL位置に設定されるようにしました。
カバーもハンダヤニで酷い汚れでしたので、束子でゴシゴシ洗います。
また、前面パネルとツマミも洗い、パネル(=アルミパネル)のへこみは金槌で叩いて修正しました。

動作確認

とりあえずこのまま電源オンしてみたら正常に輝線が出るようなので、本体のCAL出力を接続してみました。が・・・
写真はCH1とCH2にCAL出力(1kHz,0.3Vp-p)を0.2msec/div,0.1V/divで表示させたところです。
振幅は問題ないのですが、周波数が1kHzであるためにはあと0.1msec足りません。
その後、修理した掃引スイッチも再確認しましたが正常に導通しているようです。
ということはCAL出力自体の問題??

つーことでPCからWave Geneで1kHzの矩形波を入れてみると・・・
元がノートPCの音源なので波形はまるで成っていませんが、とりあえず周波数は問題なく1kHzを示しています。
そのほかに100Hzや400Hzでも試しましたが正常でした。高い周波数になると音源の特性上、波形自体が滅茶苦茶になるので測定不能でした。

となるやはりCAL出力がダメなのか?
ちなみにここら辺の回路がCALを作るところで、4011を使っているようです。
原因はコンデンサの容量抜けかな?

でも使わないのでいいや(ぉ
ところで、このオシロは明るさを最大にしないとマトモに波形が見える輝度にならないんです。
しかも最適フォーカスの位置もこんなんだし(笑

これって、やはり廉価機だからなんでしょうか。それとも管の寿命なのでしょうか? 見た感じ、管や高圧回路はピンピンしてますが・・・



修復完了

とりあえず直ったので、ここで簡単に紹介します。
このオシロの管は東芝製の国産で、その長さはSS-5711と比べると短いです。また不思議なことにアノードキャップというのが存在せず、給電は全てネック部から行われています。
高圧回路。スナバコンデンサにもほとんどススは付いておらず、管のスクリーンも非常に綺麗であることから、それほど長時間使われたことは無いように思われます。
高圧トランスがチッチャいこと(笑
電源・掃引関係の基板です(修理前)。
使われている電解コンデンサは電源部のTOWA製1個をのぞき全て日本ケミコンのSMEで、小信号トランジスタのほとんどが2SC1815GRランクです。まぁ帯域が20MHzですしこれで十分でしょうね。
上位機になるとKMEになったりするのでしょうか。

廉価機にも関わらず部品質が良いことから、流石岩通だと思います。
こちらは入力アンプ。
スッキリしていていいですね。
機能面ですが、トリガー・カップリングは非常にシンプルです。X-YモードでCH1とCH2が自由に割り当て出来るのは面白いですね。



修理費\0+入手金額\1000+送料\800=\1800で修理完了しました。
軽くてコンパクトですし、CDPのレーザーレベル調整や、電源のリプルなどを測るのに重宝しそうです。
ところでこのデザインですが、同じような物を見たことあると思ったら、結構前のモデルで同帯域を持つSS-5702とほとんど一緒なんですね。SS-7602と同時期に発売されたモデルとしてSS-7605などがありますが、これもデザインがSS-5705と酷似します。
前世代の復刻版といった感じでしょうか?


戻る