IWATSU SS-5711の修理

故障した岩通製オシロスコープの修理。

※ブラウン管製品は、万単位の電圧を発生する非常に危険な装置です。
内部には高電圧が掛かる場所が数多くあり、万が一触れてしまうと生命に関わる場合もあります。
よって、知識のない方は絶対に分解・修理作業は行わないで下さい。
ここで紹介する記事は、あくまで作者の自己責任において行っている物であり、
閲覧する方々にブラウン管系の分解・修理を勧めるものでは一切ありません。
仮に、ここに書いてある記事が原因で、重大な事故があったとしても、
当方は一切その責任を負いませんので、よろしくお願いします。


※また、本来ならオシロスコープなどの測定器は、個人で修理するべきものではありません。
測定器は、修理後はもちろん数年ごとに校正しなければならず、これらの作業は個人レベルではまずできません。

オシロが欲しくてたまんなくて、某オクでたまたまLEADER製60MHzオシロがなんと\4000即決で出ていたので落札し、出品者からの連絡を待つも一向に連絡が来ず、どうやらどうしようもないダメな出品者だったらしく諦め、仕方なくまた探し始めるも、数十Mhzなのにどれも高値での取引。ついにはオシロが夢にまで出てくる始末。。。
そんななか、某オクで\10150で入手した動作品(ジャンク扱い)の岩通製100MHz4現象オシロなんですが、自作の発振器で波形観測してたら、いきなり「プスッ」と音がして、その直後に白煙が出てきました。それでも波形は出ていたのですが、とっさに電源を落とし、仕方なく内部を診ることに・・・
ちなみにこのオシロ、届いたときからフォーカス系に問題があって、電源投入直度は波形の線が細くていいんですが、5分も経過すると線が太くなり始め、太くなったり細くなったり非常に不安定でした。

というより、まだトータルで2時間も使ってないんですが・・・
メーカに出すと入手金額を遙かに超えそうで、しかも入手後2時間経たない内にこうなった悔しさがあるため、自爆&測定値の誤差を覚悟でやることにしました。




開腹

まったく、やっとの思いで手に入れたオシロがいきなりこうなるなんて、何て付いていないんでしょうね・・・

内部はギッシリと詰まっています。写真は高圧回路の上部に被さっている、ノイズ&リーク防止用の基板を取って撮影。
その高圧部。ここではフォーカス及びカソード電圧を生成している模様。
ニオイを辿っていくと、この高圧回路の抵抗1本が焦げてました。
その隣の2SC1904。プリント文字も分からないくらいに変色し、粉も吹いています。
さらにその左にあるフィルムコンデンサは熱で皮がめくれています。
また、上の写真で見えるスナバ用と思われる青色のコンデンサも、大量のススが付いているとともに粉噴いています。相当使われていたようですね。
こちらは電源平滑コンデンサ達。日本ケミコン製の85度品で、全部チューブラ形です。矢印のやつは液漏れしています。まぁ某メーカのに比べれば可愛いもんですが(爆


修復開始

どうせ修理するんなら、見た目も綺麗にしよう。ということで、ツマミを取り外してパネルの清掃を行いました。ちなみに、掃引切替えや入力感度切替えのツマミはどっちかに回しきってから外さないと、取り付けのときにエラいことになります。
まずは電源平滑コン交換。予算の関係から、今回は35v2200uFと16V4700uFはTK(東信工業)、63V1000uFは松下のM。160v100uFにだけKMGを使いました。
今までチューブラ形だったとこなので、縦型を使うには基板に穴明けする箇所もありました。

(最初はチューブラ形を探したのですが、秋葉のパーツ屋ではチューブラ形コンデンサはUNICONという、明らかに日本製でないコンデンサを扱っている店がほとんどで、海神無線ではニチコンのが売っていたのですが高い!)


04/5/26追記
uniconは日本瓦斯工事鞄d子事業部という国内の製造メーカとのことでした。
当初、抵抗が焦げた原因は変色した2SC1904だと思ったのですが、実際にはそれはテスタ上では問題なしで、壊れてたのは2SA899でした。
で、焦げた抵抗なんですが、焦げた部分は本体の真ん中部分で、両端のカラーコードが読めるんです。灰色と金色なんですが、とすると頭に8が付く抵抗値なんですね。
で、試しにテスタで測ってみたところおよそ820Ω。新しく買ってきた820Ωの抵抗もこの値にちかいものでした(当たり前ですね)
それでも心配なので、回路図を書いてこの値が訂正かどうか考えることにします。
ちなみに、岩通にSS-5711の回路図が無いかメールで問い合わせたのですが、無視されたので。
??のところなんですが、2SA899のエミッタ抵抗なんですね。8.2kじゃデカすぎますね。

この回路図みれば分かりますが、ここがフォーカスを制御する回路だということが分かります。「AF」はオートフォーカス(ALT掃引のときに制御グリッド電圧を自動調整)です。「HV ADJ」はカソード電圧-2450Vを調整するものだと思います。
2003/08/01追記:
岩通からの返信メールが来ました。それによれば、岩通では回路図の供給は行っていない。しかし、 該当機種は説明書に回路図が載っている。説明書のコピー・送料込みで\5000。とのこと。 \5kは流石にきついので取り寄せ断念しました。

2003/09/12追記:
ある方の御厚意により、回路図のみを見せていただくことが出来ました。やはりここの抵抗値は820Ωで合っていました。
念のため、このフォーカス回路の2個の2SC1904も交換しておきました。
また、皮がめくれたフィルムコンデンサ及び周辺のフィルムコンデンサも交換(小豆色のやつが交換後)
ちかくにあるMarucon製250V1uFは日ケミKMGに交換。
あと、同じ基板上にある日ケミ製250V4.7uFも見た目が古そうなのでKMGに交換。
このほかは、日ケミ製SMC(85℃高信頼性品??)だったため交換はしませんでした。
また、今にもハンダクラックを起こしそうなところを多数発見したので盛り直し。



修復完了?

コネクタ類を元通り接続して、とりあえず裸のまま電源投入してみましたが、煙が出ることはなさそう。
そこでCALを接続したところ見事に波形が表示されました。これでしばらく放置してみましたが、交換した部品が異様な熱を持つこともなく、フォーカスもビシッと決まっています。
少なくともここから得られる測定値は正常でした。
ところで、修理中ちょっと驚いたのがこのブラウン管。オシロの管がこんなに長いなんて、初めて知りました。写真ではケーブルに隠れて分かりませんが、管自体がオシロ本体の奥行きを決定しています。
ネック部が非常に長く、電子を十分に加速させることが分かります。ネック外部は金属でシールドされ、外部からの影響を抑えているのでしょうか。
CD-ROMのアイパターンを測定してみました。


修理費としては
2SC899 \150
2SC1904*2 \300
電解コンデンサ \700
フィルムコンデンサ \600
抵抗 \5
合計\1755。
コンデンサ類で結構かかりましたね。