Panasonic RX-DT901を改造

音質向上のため改造を施します。



※画像を多用していますので、表示に時間がかかると思いますがご了承ください


さてPanasonicの高級CDラジカセといったら「低音」ですが、このDT901の低音は、吸音材を入れることにより改善はみられたものの、やはり完全に納得がいくような音ではなく、パワー感に欠けます。
これにはいろいろな原因が考えられますが、その原因を改善させることにより、重低音再生をしてしまおう!と計画しました。


音道探求

まずはRX-DT901の、音道(音の通る道)から見ていくことにします。

ソース機器はここでは省略するとして、それぞれのソース機器(ここではCD・ラジオ・カセット)からの音声信号は、ゲイン調整されたあとにこの「IC602」にあるモトローラ製MC4052Bに入ります。
これはデュアル4chアナログマルチプレクサで、実際にはソースが3つなので3ch分使っています。

このICでCD・ラジオ・カセットの中から音声を1つ選択します。
選択された音声信号は、IC609のTA2041Fに入ります。
これはDT901でいう「TECHNO SORROUND」を作り出すICで、データシートによるとシアター・ホール・ライブの3種類の音場効果を作り出すことが出来ます。
DT901の設定では「SORROUND-1から3」までありましたが、それが順次対応しているのだと思います。
TA2041Fの10番と11番ピンがLになるとデータシートでいう「ノーマル」となることから、これがDT901でいう「SORROUND-OFF」になるのでしょうね。
そして次にIC608の三菱M62411FPに入ります。
ここでは音量調整・音質設定(GEQ)・チャンネルデバイダーを行っています。
チャンネルデバイダーは、ウーファー・ツィター専用にそれぞれ低音・高音の音声信号を作りだし、スピーカドライブ用のパワーアンプに送るためものです。
これだとパワーアンプにはそれぞれの専用音声信号しかいかず、それを単に増幅すれば、特別なネットワークやアンプ前のフィルタを通さずに、それぞれのスピーカ(ウーファー・ツィータ)にダイレクトに信号を供給できます。
一石二鳥というか、コスト削減というか・・・

なぜ私はBI-AMP4DRIVEが好きでないかというと、これをやるとボーカル(中域)が出なくなるんです。ドンシャリってやつです。
いくらクロスオーバーを決めて設計しても、ゼネラルオーディオレベルでは出てくる音は中域が引っ込むんです。経験上。
中域が出ないとボーカルが出ないばかりか、音の広がり感に欠けるんです。

で、なんとかチャンネルデバイダーに入る前の音声信号を取れないかと、適当にアンプに突っ込んでみたのですが、ダメでした。音量調整された信号は取れるんですけどねー(4番と3番ピン)



アンプを改造

チャンネルデバイダーを通るのは仕方ないようなので、今回はウーファー用のアンプにパワーを入れようと思います。
デフォルトのアンプ(松下のANなんとか)は、4ch分のアンプが入っているのですが、ウーファーとツィータ合計4個をドライブさせるためにシングルとして使います。つまりスピーカ1個あたり1つの増幅回路。
単電源動作のため出力には結合コンデンサが入ることもあり、ウーファーにとっては役不足といった感じです(だからインピーダンス下げているのか!?)。

そこで、ウーファー用アンプにはBTLアンプを使うことにしました。理論上、いままでの4倍の出力電力が得られるため、パワーが入るでしょう。ツィータは今までのアンプでドライブさせます。
今回はちょうどゴミ捨て場で拾ってきたSONYのZS-3というCDラジカセがあるので、そこからLA4620を含むアンプ回路を抜き取ります。
写真はZS-3のアンプ周辺回路。放熱器は取ってあります。余談になりますが、SONYなのに使用している電解コンデンサはほとんどが松下製。電源レギュレータ付近になぜか1つだけR社があり、これだけ見事に吹いていました。
BTLアンプ部を切り取って、仮付けしてみました。
するとハムノイズが酷く、とても聴いてられません。
ちなみに、低音の音声信号はここから取ります。
元から付いているアンプに信号が行かないように、入力カップリングコンデンサは撤去します。
とりあえず配線を短くして、DT901の放熱器にICをくっつけてみました。
しかしハムノイズは相変わらずです。

一応これで聴いてみたのですが、たしかにパワーはあります。ですが、耳をつくような低音で頭が痛くなります。
音量を上げるとダクトから物凄い風圧を感じ、最大音量ではウーファーが破綻しかけています。IC自体のパワーはかなりのものです。
「ひょっとして吸音材?」と思って、取ってみました。
すると更に耳を突く音で、これじゃぁ聴いてられません!!
ダクトに耳を近づけると、中域が漏れ、微妙に箱鳴りしているのが分かりました。

吸音材を元に戻すと、箱鳴りは収まり、ダクトからは力強い低音がブンブン出るようになりました。やはりこいつは必須のようです。
アンプを変えることにしました。
これもゴミ捨て場で拾ってきたカーステ。東芝のTA8210Hが使われているのでこれをつかうことにします。


ただ心配なのはウーファーのインピーダンス。2.7Ωと非常に低いのでアンプに掛かる負担は大きいです。
(写真は最終形態の回路です)
その裏側。ちと基板が小さすぎたので空中配線箇所あり。
ところで、このTA8210Hのアンプも、ポンと付けただけではハムノイズが凄いのです。
「一点アースしてるはずなのになぁ」と思って、今までアンプのSTBYをレギュレータIC(BAなんとか)からの電源オン信号でアンプをスイッチングしていたのを、試しに電源電圧から取ってみました。するとあれだけ酷かったハムノイズがスッキリ解消!!

そこでこのようにフォトカプラを使って、電源オン信号を電気的に絶縁してみました。これでハムノイズとはおさらばできます。
で最終的に出来上がった回路が2つ前の写真。


電源まわり

低域にパワーを入れるためには電源の見直しは欠かせません。

まずはケーブル。本体右側のスピーカボックス内部にはトランスと整流ダイオードがあり、そこで整流された電源信号がメイン基板で平滑されます。
その橋渡しとなるのがこのケーブル。
4本線がありますが、電源信号に使われているのは2本だけ。その太さは実質0.5mm程度と極細です。これでは損失があまりに大きすぎ、トランスのパワーを十分に発揮できません。
それをAC100Vケーブルに交換しました。
メンテのときに一々ハンダで外す必要がありますが、まぁ音質よければそれで良いので。
AC100vコネクタのDC電源切替(内部トランス電源か単一電池電源の切替え)え接点もヤスリがけしておきます。
接点は茶色く変色しており、接点抵抗増大間違いなしです。

スピーカ再考察

さて音の出口であるスピーカをもう一度観察し直すことにします。

まずはウーファー(EAS-10PL478B)。う〜ん、このスタイルたまりませんなぁ〜(爆
コーン、エッジ、センターキャップ、ダンパー、マグネットのバランスが上手く取れていてカッコイイ!!
エッジは面積がかなりあり、布なので経年老化をものともしません。非常に柔らかいのでアンプの馬力がそれ程なくても、ある程度のドライブができます。
コーン部拡大。キラキラ光っているのが分かると思います。
パルプ素材以外に、硬性を高めるために何らかの物質がブレンドされています。雲母?
磁石部。型番から出力を想像すると10Wなんですが、多分それは定格出力なのかもしれませんね。絶対定格は20Wぐらいだと思います。
それにしても2.7Ωという異様に低いインピーダンスには毎度首をかしげます。4Ωとかなら分かるのですが、なぜそこまで下げる必要があるのかと・・・ 前にも書いたように、アンプの馬力が無いことを考慮した上で下げたのかもしれません。
そしてツィータ(EAS-7DH10A)。カタログではミッドハイとなっていました。
こちらのコーンはフツーのパルプ素材ですね。エッジ部に補強のための溶剤が塗布されています。エッジはカチカチでは無いために、コーンを押すと多少のストロークはあります。
センターキャップがやけに出っ張っているのが分かります。キャップ自体はセンターに取り付けられ、コーンに接触していません。これは高域を引き出すためでしょう。
インピーダンスは6Ω。定格は7W?


配線強化など

ウーファーの配線が細いので、損失を減らすために太い線に交換します。
上が元から付いている奴。下が交換用。
交換後。本当はここの本体スピーカコネクタも介したくないのですが、組み立ての際にエラく面倒になるので断念しました。
電源投入時のポップノイズを解消するために、リレーを用いた遅延回路で、電源投入後3秒程度はウーファーへの接続を切ります。

これをつけたことによって、電源を入れるとしばらくして「カチッ」と鳴るため、なんだかコンポみたいで精神的音質向上(?)にも貢献したりしなかったり?
リレーから本体スピーカコネクタまでも、太線でダイレクトに接続します。
ヘッドホンは使わないので良し。





さて結果は?


段階ごとに音を聴いていったので、各改造によってどう変化したかがよく分かりました。

・まずアンプ改造によって、低域の深みが改造前と比べて格段に向上しました。もちろんBTLなのでパワーがあり、押し出し感があります。

・電源配線強化では、大音量時の電力不足(電源LEDが暗くなる)に改善が見られました。また、低域のボンつきが解消され、安定感のある低音になりました。

・スピーカ配線強化では、低域の重心がさらに下がり、非常にどっしりとした、堂々とした深い低音が聞けるようになりました。


これらの改造を行うことで、今時のチャラチャラしたMDコンポなど比べる気すら起きないような、量感たっぷりの低音が楽しめます。今まではスペアナの「S-XBS」のレベルにはあまりスピーカが反応していませんでしたが、今回の改造で格段に向上します。

※ここで注意ですが、いくら量感のある低音といえど、そこそこの能力のあるウーファーには負けますので、改造を考えている方は過度の期待はしないでください。ここでは「RX-DT901の更なる重低音化」が目的ですので。



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