低域ブースト回路の製作


3年前に買ったトランジスタ技術を読んでいて、興味深い回路の記事を見つけました。それは「オペアンプ1個で作る G=10dB@fo=70Hzの低音増強回路」というものです。
これはオペアンプを使った半導体インダクタを利用し、共振回路でもって中心周波数70Hz・ゲイン10dBを実現したものです。
この回路は指定された周波数だけを増幅し、他の周波数域はゲイン0ですので(トラ技の回路図通りに作れば)、「スパーウーファー製作」のときの回路のような「ローパスフィルター」ではありません。

今回は、トラ技に載っている回路をカットアンドトライで若干加工して、より実用的(?)にしてみました。パソコンのスピーカーやヘッドホンアンプに追加することで、低域の周波数特性を補うことができます。

回路特性
共振周波数:fo=50Hz(あたり?) 
共振点ゲイン:0〜10dB? (可変)
電源電圧:単一12V


※可変させたくない場合については後で説明



STEP1
まず基本となるのが、オペアンプの動作方法です。オペアンプを動作させるには必ずアースを基準としてプラス/マイナスの2電源必要で、そのまま単電源(プラス/マイナス(兼アース))で動作させることはできません。
そこで、単一電源で使う場合には若干の細工が必要です。


STEP2
オペアンプICには、ずっと前にMHC-J970EXのビデオ音声入力の感度が悪いので、その増幅用に買っておいたJRCのNJM4580DDを使います。これは秋月電子で1個\50で買ったものです。たった50円なのにオーディオ用に特化されたDランクです。非常にお買い得でしょう!
NV-BS900のジャンク音声基板から取り外したNJM4558DやRC4565DDというオペアンプICも使ってみましたが、ノイズレベルはNJM4580DDが一番小さいようです。

★改良点★
@単一電源で動作できるように分圧回路を加えた。

回路図通りに作ると、ブーストされた音は「エッ? これが70Hz?」と思えるほど聞き苦しい低音(作為的な低音で長時間聞くと疲れる)なため、C&Tでいろいろやった結果、以下の方法で改善がみられました。

AC1(0.47μ)に更に0.47μを並列に接続し、0.94μFとした(ごめんなさい、回路図では0.47μのままです)。
BC2は本来の回路図では0.056μFであったが、これを0.72μFとした(これまたごめんなさい。回路図では0.22μFとなっています)。
C4.7kΩの抵抗を、ブーストレベルを変更できるように可変抵抗にして、ブーストゲインも広くとれるように30kΩ(スイマセン、回路図では50kΩとなっています)とした。

※ブースト可変用に30kΩの可変抵抗にすると、ブーストレベルと同時に他の周波数帯のゲインも若干変化してしまいます(15kΩ以降著しい)。これはR1/R2の抵抗値を変えてもなんでか周波数可変(ブーストゲイン可変)ができなかったため、やむを得ず行ったことで、もし一定のレベルだけブーストしたいと思えば、これは8kΩ辺りにしておいてください。


今回の回路では、音質にも気を配るためNV-BS900のジャンク音声基板から取り外した音響用コンデンサも多用しました。とくに入力/出力のパスコンには音声信号が流れるため気を使いましょう。コンデンサの質で音はエラく違ってきます。


トラ技によると、以下の式で共振周波数(fo)とクオリティ・ファクタ(Q)が求められるそうです。自力で計算したくないですね(笑)


ここで分かったと思いますが、これはLCR直列回路の共振周波数の式

にソックリですね。つまりNJM4580DDの片側(5〜7ピン)周辺が共振回路。
今回はコイルと抵抗の代わりにその回路(C1から下の回路)が加わったことになり、
これが冒頭でも触れた「オペアンプを使った半導体インダクタ」の回路です。


STEP3

これはトラ技の回路図とおりに製作した試作機です。とても簡単ですね
これが様々な実験の結果、最終的に作り上げた回路です。
0.47μFのマイラーが3個しかなかったので、0.1μFを4個並列に接続しました。また0.72μFも無かったため、0.22+0.24+0.24μFを並列に接続しました。ちなみにこれはステレオ回路です。

ここで一つアドバイスですが、共振回路に使用するコンデンサはマイラー(フイルム系?)の方が音がよいです(写真でいうと緑色と透明なやつ)。積層型(?)だかなんだか分かりませんが、写真の中で小豆色に見えるコンデンサは使わないほうが良いです(今回は部品が無かったためやむを得ず使用している)。
低音の伸びが全然違います。
回路の裏側。1点アースを守ったためか配線だらけ。



EAB-MPC57Sに接続して聞いてみましたが、ズーンと来る聞き心地の良い低音でとてもよいです。

また、可変抵抗でブーストレベルを変化させることができます。抵抗値をゼロに近づけるほど原音(回路に入る前の音)に近くなります。このときゲインはほぼセロです。逆に30kΩの方にもっていくほどブーストレベルが大きくなり、それに連動して他の周波数帯のゲインも上がってしまいます(また同時になぜか高域も減衰する)。この点は改善の余地があると思います。




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