注:SW電源について1


よく某オクなどで「電源入らず」のNV-FS900を見ることがあります。
具体的にはコンセントを入れる(または電源ボタンを押す)と「ガチャガチャ・・・」とメカが暴走したり、「チッチッチッチ・・・」という音に連動して電源LEDが点灯、同時にヘッドが高速回転する。電源は正常に入るものの、テープを挿入・または再生すると同様の症状が出る。など様々です。2
また、電源はいるも映像全体にザワついたノイズが乗っているという症状も起きやすいようです。
これらはすべてスイッチング電源(以下SW電源)の2次側平滑コンデンサの老化が原因で起きている現象です。よってそのコンデンサを新品に交換すれば動作することになるのですが、高周波平滑のため低インピーダンス品でなければなりません。
ただ、FS900のSW電源はコンデンサの容量に関しても非常にシビアで、適当な物がないからといって少し違う値の容量のコンデンサを付けると、場所によっては同様にメカの暴走・映像ノイズが発生します3
ここでは、あくまでも例として、私が行ったコンデンサ交換法を紹介します。

1 もし懐に余裕があるようでしたら、新品のSW電源を買った方が確実です。ただ、SSの場所によっては在庫がないか、部品供給が終了しているかもしれません。注文番号及び値段を以下に表します。
品番 VEP01416A
名称 デンゲンキバン
価格 \5700

2 過負荷によりSW電源のスイッチング素子(STR-D6004x)等が逝っていて、全く電源が入らない(反応がない)場合もあります。判別方法としては、コンセントに差し込んだ瞬間に、「チュン」とか「キュン」などと小さな音が出れば、まだ生きていますのでコンデンサ交換で対処できます。音がない場合には逝っている可能性があります。これらの部品は単体としての入手は困難ですので、諦めるしかありません。
3 当たり前のことですが、近い容量がないからといって、安易に容量の異なるコンデンサを並列に接続することはしないで下さい。たとえば、560uFが無いので470uFと100uFを合わせて570uFをつくり、それで代用させようとすると許容値以上のリプル電流が100uFに流れる可能性もあり危険です。またコンデンサを直列に接続するのは以ての外です。

なお、ここで紹介したことにより発生する不都合には、一切責任持ちません。
仮に低インピーダンス品に交換して、動作しなかったとしても、それは自己責任とします。


SW電源に使われている電解コンデンサのみを表にしました。
C 番号 耐電圧(V) 容量(uF) C番号 耐電圧(V) 容量(uF)
8 100 1 25 16 100
9 250 120 26 20 330
13 16 47 27 6.3 56
17 50 56 29 50 10
18 50 27 30 6.3 100
19 35 82 31 6.3 56
20 16 560 32 6.3 100
21 16 330 33 16 100
22 10 470 35 16 10
23 6.3 470

以下に表す「インピーダンス」は20℃100kHz時の最大値。「リプル電流」は105℃100kHz時の定格または許容値。「tanδ」は20℃120Hz時の最大値を、それぞれメーカーのデータシートから抜粋しました。

※04/08/13追記
以下では代用品コンデンサとして、日本ケミコンのLXFを用いている箇所もありますが、この製品は4級塩系電解液を採用しているため、経年により激しい液漏れ・発煙・発火の可能性があります。
コンデンサ交換による修理を検討されている方は、4級塩系電解液コンデンサは絶対に用いないようにしてください。


C13の16v47uFはNXL。インピーダンス1.7Ω・リプル電流78mA・tanδ0.16
これはELNAのRJJの35V56uF に交換。インピーダンス0.52Ω・リプル電流290mA・tanδ0.16
C17の50V56uFはHFE。インピーダンス0.76Ω・リプル電流163mA・tanδ0.10
これは日ケミのLXFの50V39uFに交換。
LXFは105度15000時間保証の低インピーダンス品だが詳細不明。4級塩系電解液仕様。
C18の50V27uFはHFE。インピーダンス1.5Ω・リプル電流133mA・tanδ0.10
これも日ケミのLXFの50V39uFに交換。
※右の写真では82uFが写っていますが、これは間違いです。
C19の35V82uFはHFE。インピーダンス0.76Ω・リプル電流163mA・tanδ0.12
これは日ケミのLXFの50V82uFに交換。
C20の16V560uFはHFZ。インピーダンス0.045Ω・リプル電流1440mA・tanδ0.10
これは日ケミのSXEの63V560uFに交換。
SXEは105度高周波平滑用低インピーダンス品だが、詳細不明。105℃1000時間汎用低Z品? インピーダンスは0.050Ω程度??
C21の16V330uFはHFE。インピーダンス0.35Ω・リプル電流381mA・tanδ0.16
これは日ケミのLXZの35V330uFに交換。インピーダンス0.068Ω・リプル電流1050mA・tanδ0.12
C22の10V470uFはHFZ。インピーダンス0.065Ω・リプル電流1015mA・tanδ0.15
これも日ケミのLXZの35V330uFに交換。インピーダンス0.068Ω・リプル電流1050mA・tanδ0.12
C23の6.3V470uFはHFZ。インピーダンス0.090Ω・リプル電流760mA・tanδ0.17
これは日ケミのSXEの10V560uFに交換。インピーダンスから考えるとSXEだとこれでギリギリか、オーバーかも?
C25・C33の16V100uFは85℃小型標準品。
ここはレギュレータのデカップリングなので標準品が使えるが、標準品よりもLXFの方が安かったので16V120uFを使った。
C26の20V330uFはFZX。詳細不明だが低インピーダンスっぽい。
これは日ケミのLXZの35V330uFに交換。インピーダンス0.068Ω・リプル電流1050mA・tanδ0.12
C27・C31の6.3V56uFはKF。詳細不明だが恐らく105℃小型標準品。
これは標準品でかまわないと思うが、ELNAのRJJの35V56uF が大量にあるためこれに交換。インピーダンス0.52Ω・リプル電流290mA・tanδ0.16
C30・C32の6.3V100uFもKF。
これは日ケミのLXAの10V100uFに交換。105℃高信頼性長寿命(7000時間)品。
C35の16V10uFはNHE。おそらく105℃標準品。
これは日ケミのKMGの50V10uFに交換。
今回、C29の50V10uFと、C9の100V1uF、C8の250V120uFは、目視の限り不都合は見られなかったので交換しませんでした。これらは標準品で代用できますので、必ず105℃品を使って代用して下さい。C8は150uF程度でも代用できると思います。
交換したのにも関わらず、暴れる。という場合には、ハンダクラックが考えられます。SW電源の写真の場所のハンダ部分をすべて盛り直します。
ここはかなりの確率でクラックを起こしますので、たとえクラックが起きていなくても盛り直しておいてください。
コンデンサ交換後のSW電源内部。
交換後のSW電源外部。
外側に突き出す放熱器の接触部分に、シリコングリスを塗っておきます。これだけでかなりの放熱向上効果があり、内部温度上昇によるコンデンサへの負担を低減できます。
コンデンサ交換後は、SW電源上部に被さっているシールドは取り外してしまいました。これにより、よりいっそうの放熱効果があり、コンデンサの寿命を延ばすことができます。




これですべての動作が問題なくなりました。
低インピーダンス品といえどジャンク店で購入したものなので、かなり安く済みました。

最後に

標準品を使って動作成功された方もおられるようですが、一般にSW電源の平滑に標準品を使うのは自爆行為です。事実、私は以前に日本ケミコンのKMGを使い、張り替えを行いましたが見事に失敗し、メカの暴走・ヘッドの高速回転の末、SW素子を破壊してしまいました。
仮に持ちこたえたとしても長続きはしませんので、その点留意していただければと思います。


低インピーダンス電解コンデンサの入手ですが、千石電商では東信工業の低ESR品が入手可能で、これによる動作報告もありました。
また、交換の際には必ずsw電源の全ての電解コンデンサを交換するようにしてください。
2003/08/29追記:

交換した2次側のコンデンサですが、夏になると触れられないくらい熱くなっていました。恐らく80℃は軽くいっていると思います。
そこで以前交換しなかったC9を交換することにします。
手元に120uFが無かったので、EPSONのPM-700Cプリンタから抜き取ったSW電源の1次側を使うことにします。しかもよりによってRコンだったりします。基板自立型だから少しは強いかな?でも凄く不安。200V220uFです。
過渡電流を考慮して整流ダイオードもそのSW電源のものを使います。


結果、2次側コンデンサの発熱が見事に緩和されました。1次側の平滑コンデンサの老化により、リプルの収束が遅いためにスイッチング周波数が不安定になったりして、その結果高リプルで2次側コンデンサが異常発熱していたのかもしれません。



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