Panasonic RX-DT901の修理

Panasonic製高級CDラジカセの修理です。



※画像を多用していますので、表示に時間がかかると思いますがご了承ください


東京に持っていくのに、以前修理したSONYのFH-B10を持っていこうと思ったのですが、改めて聞いてみると低音がボコボコいってとても耳が疲れます(というか頭が痛くなる)。音楽を聴いてストレスが溜まってしまったのでは全然意味がないので、ここはひとつ松下製のオーディオ機器でも入手しようと・・・

欲しいと思っているのはRX-DT909、DT901、DT95のどれかなんですが(どれも最上位機ですね^^;)、DT909は個人的にデザインがちょっと好みではないし、DT95は滅多にお目にかかれないし、もし見つけたとしても高いと思います。そこであえてコブラトップ非採用のDT901を狙うことにしました。DT901はスピーカネットがパンチメタルではなくて一般的なコンポと同じ布(?)なんです。しかも色がっぽいので高級感倍増!!

某オークションを見てみると、DT707やDT701、DT77などの7シリーズはよく出るのですが、9シリーズはなかなか出ません。数週間にわたってチェックしていたところ、出た出た!RX-DT901!! 
「カセットが壊れています。CDも再生できていますが保証はできません。付属品は電源コードのみ」ということで開始価格が\2500。上限を\3500と決めて入札しましたが、結局\2500で落札しました。


内部を診る





届いたDT901ですが、恐ろしく状態が良いです。小さな傷は数カ所ありますが、目立った傷や汚れはなく、埃も付いていません。
早速チェックしてみましたが、確かにカセットが壊れています。テープを入れても認識さえしませんでした。
(写真では、光の加減とデジカメの気合いの無さでかなり紫に写っていますが、実際はもっとグレーに近いです)
フタをあけてまず目に止まったのがこのトランス。なんでこんな小さいのが付いてるの?
もしかして・・・・
やっぱり! なんとこの液晶ディスプレイのバックライトはELパネルでした。矢印の2つの電極がEL電源です。このELは発光色が緑ですが、パネルを取り替えて違う色にできそうですね。

この時代(92年)にELを採用しているのに驚きました。
私は松下製のラジカセでテープデッキのギア掛けは2度ほど経験していますが、今回はそれではなくて、単なるリーフスイッチの接触不良のようです。計10本のリーフスイッチの接点をヤスリで磨いて終了となりました。磨く前に接点を見てみたのですが、どれも真っ黒。なんだか、意図的に黒く塗っているような・・・ 
これでカセットはデッキ1/2共に正常に動作するようになりました。

そーいえば、ギア欠けが起きるのは、後のDT*5から採用された新型メカが多いみたいです。この新メカは60分テープを90秒で巻き戻す高速設計なのですが、その分ギアに掛かる負担が大きいからだと思います。
これは内部キャビネットにある刻印ですが、製造は92年の11月頃に行われたようです。

ここで、ふと思いつきで松下製CDラジカセの早見表をつくってみました。
間違ってましたら指摘してください。
また、実際にはこれ以外にも機種が出ていますので、「上位機」以外の種類はもっとあります。表はシリーズ的な機種を表しています
年代 上位機 中堅機 下位機
1988? RX-DT9 RX-DT7 RX-DT5?
1989 RX-DT90 RX-DT70 RX-DT50
1990 RX-DT99 RX-DT77 RX-DT55?
1991 RX-DT909 RX-DT707 RX-DT505
1992 RX-DT901 RX-DT701 RX-DT501
1993 RX-DT95 RX-DT75
1994 RX-DT07 RX-DT05
1995 RX-ED90 RX-ED70




スピーカー

この機種はバイアンプ・4ドライブ方式です。DT一桁機から採用されていましたから歴史あるものです。このシステムは後のDT75/95シリーズ、96年頃に出たPA型のCDシステムに採用されたのを最後に終わってしまいました。


低音・高音用のスピーカーをそれぞれ別のアンプでドライブする方式で、一見すると非常に良い印象を受けますが、下手にこれをやるとボーカルが出なくなるんで困ります。
ツィータにはエンクロージャーが被さっています。
ボックスはDT**や*0*シリーズ同様、共振点の異なるバズレフポートが付いています。
このウーファーは押した感じかなり柔らかいです。アンプが良ければ低音もズンズン出るでしょう。ツィータ(カタログでは「ミッドハイ」(中高音用?)と書かれていた)は楕円です。これはなぜかというと、ツィータを円形にしてしまうと、横幅が半端じゃなくデカくなるからでしょう。ただでさえ松下のCDラジカセはデカいですから・・・


アンプ

ご自慢のBI-AMP回路を見てみます。放熱板には2つのパワーICがついているので、始めは低音・高音用スピーカーをそれぞれ別のICでドライブしているものと思っていましたが、基板のパターンを見ると、どうも違うようです。
右のIC(LA4645N)がスピーカーをドライブするアンプで、左は電源コントロール用みたいです。ってことは・・・
各スピーカーはコンデンサ結合型のアンプでドライブされていました。その証拠に、出力段にそれぞれのカップリングコンデンサが付いています。このアンプはBTLではありませんでした(ショック!)。

私はこのカップリングコンデンサを通してスピーカーを鳴らすのが嫌いなんです。このコンデンサ1個で音が老化しそうだから・・・
ちなみにウーファーが10V2200uF、ツィータが35V33uFです。

後に、次期モデルであるRX-DT75のアンプもコンデンサ結合型であることを確認しました。
おそらく前モデルのDT*0*シリーズもこうなっているんじゃないでしょうか。

大きさ比較

RX-ED90と大きさを比較してみました。DT901の方が若干大きい(2cmくらい)です。これでツィータが楕円だった理由が分かりますよね。
しっかしDT901はデカいです。横幅70cmはあります。
ここでRX-ED90を紹介しましょう〜

これは95年に発売された松下製CDラジカセの最上位機です。新品3万で買いました。
「業界初のショルダートップスピーカー」搭載(見えますよね?上にポコって出ているやつです)。音の臨場感を再現。さらにスペシャライザー(3Dエフェクト機能)搭載で立体音響が体感できる。ちなみにショルダートップシステムはこの後の機種でも採用されるとなく、これが最初で最後でした(似たような機種はでたが→RX-ED77等)。

私は、これが松下が気合いを入れて作ったCDラジカセの最期の機種だとおもいます(S-XBS機能があるのもこの機種が最後)。なんとアンプはBTL方式です。そのためか、低音に関してはDT901より出ています

しかし、この機種は欠陥といえるかどうか分からないですけど、そのくらい致命的な問題があります。
それは低音が割れてるように聞こえるというもの。実際には割れてはいないのですが、ショルダートップスピーカーについているエンクロージャーが、ウーファーから出る低音と共振するのです。そのためかなり大きい音で「ブーン」とか「ゴーン」という音が出ます。聞いているとかなりストレスを感じます。


その他機能

このラジカセで特徴的なのがこのカセットデッキです。一見すると「どうやって入れんだ?」って感じです。
取り出しボタンを押すと上のカバーが奥にスライドして、このようにカセット挿入口が出てきます。
このようにカセットを入れると、それを感知して自動で収納して、一番最初の状態(カバーが掛かった状態)になります。
これはカッコイイです。でもひとつ問題なのが、中のテープの状態が見えないこと
メニュー方式を採用しているので、本体に付いている操作ボタンは少ないです。液晶ディスプレイの下にあるメニューボタンで各種設定を行います。PCディスプレイのOSDみたいな感覚で操作できて良いです。

液晶にはスペアナも搭載しており、S-XBSレベルや各周波数帯のレベルを任意に操作できます。

また上位機ならではのTECHNO VOICE機能があり、例えばテープを入れてないのに再生を押すと「テープを入れてください」とか言ってきます。また現在時刻も声で知らせてくれたりします(その他にもカウントダウンや5分ごとに時間経過を知らせてくれる機能もある)。





修理完了


とりあえず完動となりました。ヘッドホンの音が悪かったので、電子工作コーナーで作ったヘッドホンアンプをつけておきました。
この機種の問題点がありました。高音レベルを上げると、かなり盛大にホワイトノイズ(って言うんですかね? 「サーッ」というノイズです)が発生する事が分かったのです。

音質に関しては、低音はクセの無い良い音です。ただアンプがアンプなので、BTLなんかにするともっとパワーが入ると思います。高音はデフォルト状態だと控えめなので、調整してやる必要があります(でもそうするとノイズがぁーー)。BI-AMPなので思った通り、ボーカルが引っ込んでます。まぁ DT1桁機からそうでしたので仕方ないかと(私は以前にDT9の音を聞いた記憶がありますが、ドンシャリ系の音でボーカルが全然出ていない印象が強かった)。
でもちょっとショックだったのが、低音に関してはRX-ED90に負けてるってことなんだよなー  BI-AMP 4DRIVEを改造してBTL 2DRIVEにしちゃおうかな?

それにしてもデカいです。今時のコンポの2倍くらいはあるんじゃないでしょうか。横幅70cm・・・

ここで、松下電機のページにこんなんあったので紹介します。
http://www.panasonic.co.jp/customer/audio/manual/main.html
だいぶ昔の機種のカタログまで載っていますが、今一番情報が欲しいDT901のデータはありませんでした(泣)



その後・・・

もっと低音が滑らかにならないかと思って、左右ボックスに吸音材を入れてみました。
視聴してみると以前より低音が鳴らなくなってる・・・・ よく調べてみると吸音材が前面のバズレフポートを塞いでいました。それを解決すると、見事に奥深い低音が出るようになりました!!
これはいいです。リスニングポイントによってはズーンと来る聞き心地の良い低音です。


戻る